事業承継におけるM&Aの活用
株式会社キャピタル・ソリューション・ビジネス
加納 芳邦
掲載日:平成31年3月22日
第3回 M&Aのメリットとデメリット
M&Aを活用するメリットとデメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。
メリット
① 事業の継続
後継者がいない場合、
「廃業」を考えることになり、従業員には転職して貰わないといけません。
転職先がうまく見つからないと、従業員とその家族は、路頭に迷うことになります。
また、廃業と同時に退職となる従業員に対し、退職金の問題も出てきます。
一方、M&Aで買手先が見つかると、会社は継続されます。
当然、従業員も基本的にはそのまま雇用されますので、従業員の生活を守ることもできます。
② 経営の安定と成長
買手先は、資金力のあるケースが多く、経営の安定が見込めます。
また、資金面も考えて、これからの会社の成長や拡大の可能性も考えることができます。
買手先が現社内の従業員を次期後継者にしたいと考え、
経営者になるための教育をしてくれることもあります。
③ 株式の譲渡収入
「第2回 事業承継のためのM&A」でも述べたところですが、
株式譲渡を行った場合、株式の譲渡代金がそのまま株主に入ります。
多くの場合、中小企業の株主は社長ですから、
株式を譲渡すると社長に株式譲渡代金が入ることになります。
株式譲渡代金を社長の今後の生活資金に充てることができます。
④ 個人保証の解除
「第1回 なぜ、後継者問題が起きているのか」でも述べましたが、
会社が銀行等から借入をしている場合、社長が個人保証をしていることが多いです。
M&Aを行うことで、個人保証は買手先に引き継がれ、一般的には社長は個人保証から解放
されることになります。
金融庁の調査結果で、
銀行がこの社長の個人保証を解除してくれないケースがみられることが判明しました。
しかし、M&Aで株式を譲渡する場合、
この個人保証の解除を事業譲渡する条件の一つにすることもできます。
デメリット
① 相手を見つけるのに時間がかかる
M&Aを行うことを決めたからといって、すぐ相手が見つかるわけではありません。
仮に手を挙げてくれた相手がいても、その後の話し合いで条件が合うとは限りません。
② デューデリジェンスに労力がかかる
また、デューデリジェンスがネックになることもあります。
デューデリジェンスは企業精査といって、
買手先が契約前に公認会計士や弁護士等に依頼し、
売り手の会社の財務状況等を精査することをいいます。
このデューデリジェンスは、M&Aを実行するための金額をはじめ、
買手先がこれからの経営する会社の将来に関係するため、時間を割いて行われます。
そのため、要求される資料、データ等を面倒がらず、速やかに正しいものを提出する
労力が必要になります。
実際の会社の内容が良くても、デューデリジェンスを行った際、
時間がない、用意していない等で虚偽の資料やデータを提出してしまうと、
相手の信用を失い、折角のお話もなくなります。
面倒と思っても言われたことに協力し、対応する覚悟も必要になります。
下記にM&Aのメリットとデメリットの表を整理して記載します。
M&Aをお考えになる際、ご参考になればと思います。
メリット | デメリット |
---|---|
・事業の継続 ・従業員の雇用の継続 ・経営の安定と成長 ・株式譲渡で得る代金 ・個人保証の解除 |
・買手先探しに時間と労力が必要 ・デューデリジェンス (企業精査を受ける必要がある) |
このようにM&Aには、メリットとデメリットがあります。
問題は、思うような条件で譲渡できる買手先を見つけることができるかどうかになります。
自分で見つけることは、非常に困難なことですので、
次回、誰に頼むとうまくいくかについて、述べたいと思います。
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