事業承継におけるM&Aの活用

株式会社キャピタル・ソリューション・ビジネス
加納 芳邦

掲載日:平成31年4月12日

第5回 M&Aを行うための準備

 

M&Aを決めた場合、どのような準備が必要になるのでしょうか。

 

まず気持ちから

まず、事業を本当に譲渡する覚悟を決めてください。

 

M&Aを締結してから、「やっぱりまだ社長をしたい」ということはできません。

暫くは(最長2年程度)、会社のこと(経営・事業)を知っている人が必要であるため、

社長として慰留してもらうことがありますが、期限がくると潔く退任しないといけません。

 

内密に進めましょう

M&Aを決めた場合、

会社の規模にもよりますが、従業員全体には極秘で進めることが一般的です。

 

経理や財務の従業員は、会社の業績をある程度把握していると思いますが、

営業や技術など、直接経営に携わらない従業員がM&Aの動きを知ると

「会社の経営に問題があるのでは?」や「倒産するのか?」と心配する場合があります。

 

このように、従業員に無用な不安感を増幅させることを防ぐためです。

また、取引先に妙な形で伝わると取引にも悪影響が出かねません。

 

必要な資料を揃えましょう

帳簿類の整理、社員名簿等の必要な資料等は、M&Aを担当者より依頼されます。

いきなり依頼されてもどこにあるのかわからないと、慌ててしまうことになります。

また、M&Aを行うことを知らない社員が管理している場合、

頻繁に書類の用意を指示すると、不審に思われる可能性があります。

 

必要な資料を扱う担当者を限定、厳選しておくとともに、

常日頃、どこにどの書類を収納しているのかを

社長及びM&Aを担当する役員または社員が把握しておく必要があります。

金額の想定

M&Aは、必ずしも売りたいと思う金額で譲渡できるわけではありません。

どうしても思った金額より安くなることが多くなると思います。

 

その時の貴社の株価や利益など、様々な数字を基に譲渡価格を算出します。

よく使われるもの算定方法は、時価純資産方式や類似会社批准方式などです。

大雑把に、利益の5年分くらいが一つの基準になることもあります。

 

金額の折り合いもM&Aを行う上で労力が必要となるところです。

デューデリジェンス(企業精査)を受けるために

買手先候補が見つかると、

公認会計士や弁護士等によるデューデリジェンス(企業精査)が行われます。

その際、粉飾決済やしたり情報を隠したりすると後々問題になり、交渉は決裂してしまい

ます。

 

また、買手先からの質問に速やかに返答しないと、

買手先との信頼関係が成り立たなくなってしまいます。

社長が社内の資料や情報をきちんと把握していないと、手間取りますので、

常日頃から気を付けておかないといけません。

振る舞いにも気を付けて

M&Aと難しい用語で言っても結局は人と人の話し合いです。

応対態度や話し方で、会社の印象は随分変わります。

振る舞いが問題で、決裂したとはならないようにしたいものです。

 

私は、会社と社長が元気なうちに会社の将来について考えていくことを推奨します。

 

次回で最後になりますが、会社のこれからを一緒に考えていければと思います。

 

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