人事制度を問い直す
戦略組織コンサルティング合同会社 代表
関西大学 大学院 商学研究科 非常勤講師
村上 統朗
コア人材像の明確化とキャリアパスの構築とは
トータル人事制度の基軸となる等級制度について見ていきたいと思います。
コア人材像の明確化
ビジョン、事業戦略、人材戦略から導きだされた人材像を「コア人材」といいいます。
これが御社にとって「あるべき人材像」です。
コア人材に入社して何年でなって欲しいか?どの職位がふさわしいか?を考えます。
「大学卒が入社して15年、課長」が、あるべき姿と考えるならば、
「37歳、課長」がモデルとなります。
その「37歳、課長」に求められる能力やスキル、経験を具体化していきます。
これが課長の資格要件となります。
資格要件を明確にするところが、人事制度構築上最も重要なところです。
資格要件は経営者だけで考えるのではなく、
社員を巻き込んで構築することで納得性の高い資格要件が出来上がります。
課長の資格要件が出来上がれば、
では部長はどうなるのか?係長はどうなるのかということになります。
そうなると次長や課長代理などの職位は自ずとなくなり、
極めてすっきりとした職位体型が完成します。
各社員において、資格要件が出来ているか出来ていないか、足りているか足りていないかを
明確にすることが評価制度となります。
出来てないところ、足りていないところを出来るようにしたり、
足りるようにするのが教育制度です。
キャリアパスの構築
さらに15年間、「37歳、課長」に求められる能力やスキルを
どのように身につけさせたり、経験をどのように積ませるかを考えることが、
「キャリアパスの構築」となります。
15年間同じ部署で良いのか、ジョブローテーションを考えたほうが良いのか、
さらに何年担当をさせ、何年係長を担わせるのか、各企業によって様々だと思います。
キャリアパスが明確になると、企業から社員への昇格に対するメッセージとなり、
昇格スピードの基準となります。
中小企業の場合、同期も少ないため昇格スピードの比較が難しいため、
あまり昇格自体に関心がない場合が多く見受けられます。
キャリアパスを明確にすることで(企業が社員に期待する昇格スピードを提示すること)、
社員にバーチャルな競争相手を作り出すことになります。
以上のように「コア人材」の明確化と「キャリアパス」の構築は、
トータル人事制度の基軸となる等級制度を構築するうえで極めて重要です。
じっくりと取り組んでいただきたいと思います。
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