人事制度を問い直す
戦略組織コンサルティング合同会社 代表
関西大学 大学院 商学研究科 非常勤講師
村上 統朗
成果主義は悪なのか
「成果主義」に対する認識状況
人事制度のあり方は、「成果主義」という言葉だけが先行し、
「成果主義」が徹底的に批判されたあと、再度「年功序列」が賞賛されました。
その後リーマンショックや東日本大震災を受け、多くの中小企業は企業存亡の危機となり
人事制度どころではなく、人事制度に関する論議は空中分解した感があります。
あれほど本屋を賑わせていた人事制度関連の書籍は、いまでは影を潜めています。
今回成果主義批判が高まっていた2005年当時の論調から「成果主義」を見直し、
人事制度とは何かを問い直してみたいと思います。
次の記事は、覚えておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、
産経新聞に2005年7月16日に掲載された成果主義に関するセンセーショナルな記事です。
いかがでしょうか?
成果主義で手取り2万円とありますが、これは成果主義でしょうか?
当時の「成果主義」に対するイメージは、千差万別バラバラでした。
成果主義は、おおまかにまとめると以下のように一般的に認識されていたようです。
- 成果主義とは成果をもとに賃金格差をつけるための考え方である
- 成果主義を導入することで、総額人件費削減、賃下げが可能である
- 成果主義にすることで社員のモチベーションを上げることができる
- 成果主義を導入しない企業は生き残れない
- 成果主義は長期よりも短期利益志向である
- 成果主義はチームよりも個人志向に向かう
しかし「成果主義」とは本当に上記のような認識に基づいた考え方なのでしょうか?
「成果主義」やその他の評価に対する考え方
先ほどの一般的に認識されている内容と比較してみると、
「成果主義」は、企業に都合の良いように人件費を変動費化させる考え方として利用され、
「結果主義」や「業績主義」を「成果主義」と呼んだといえます。
本来「成果主義」は
「結果だけでなく、結果が生まれたプロセスや、その途中での中間成果物も評価対象とする」
考え方であって、極めてオーソドックスで納得性の高い考え方です。
「成果主義」の定義を明確にし、理解することで、
既存の人事制度を問い直すよいきっかけになると思われます。
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