取引先を見直す絶好の機会です
リスク管理研究所
高市 幸男
第1回 取引先とリスク
東京商工リサーチの調べによると、
2014年度の全国企業倒産件数は9,543件でした。
6年連続で前年を下回り、
1990年度以来24年ぶりに1万件を割り込みました。
倒産の激減から、焦げ付きの発生がゼロになった会社では、
与信管理の予算削減、人員削減、部署の統合・廃止なども聞かれます。
ここで良く考えて欲しいのですが、
貴社の取引先でリスクをもたらす(恐れのある)所は販売先だけですか?
例えば、東日本大震災のとき材料の供給が滞り製造ラインが停止し、
大変な損害を被った会社が多々ありました。
中国の食品管理問題で日本マクドナルドの業績が悪化しました。
タカタのエアバックリコールは本田技研工業の業績に大きな影響を与えました。
江守グループホールディングスは中国の子会社問題で倒産しました。
以上のように、
仕入先や外注先などの持つリスクは、販売先に匹敵し、時にそれ以上と言えます。
現実、大手メーカーではサプライチェーンの安定化を図るため、
仕入先・外注先の信用管理を徹底する動きが多々認められます。
従来の与信管理は販売先の売上債権だけを対象としてきましたが、
それだけでは、不十分であることが明白です。
リスクとは
リスクとは、与信管理の「リスク」は倒産や焦げ付きといった損失・損害のみを指します。
一方、リスクマネジメントの「リスク」は損失だけでなく利益を得る可能性も含み、
利益と損失の不確実性を意味します。
よって、リスクマネジメントではリスクを的確に把握・コントロールすることによって、
「損失の回避・縮小」と「利益の獲得」の両方を目指します。
これからは図表1のリスクマネジメント処理 フローに沿って説明します。
リスクの認識
取引・信用リスクの認識とは、
各企業との取引によって起こる損失・損害発生の可能性を見極め、理解することです。
そのために、先ず自社を中心において関係する取引先を全て洗い出してください。
そして、考え得るリスクを書き出してみて下さい。
筆者が思いついた取引先とリスクは、図表2の通りです。
様々な取引先があって大変ですが、
先ずはお金の回収先である販売先や販売代理店、
次に支払先である仕入先や外注先、
3番目に資産の預け先である賃貸先や貸付先の順序で、
それも取引金額の大きい順に考えてゆけばいいかと思います。
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