部下が育つ人材育成の基礎知識
デライトコンサルティング株式会社
代表取締役 近藤圭伸
第3回 部下の昇進とキャリア形成
昇進と昇格の違いを部下に説明できるようにする
人事労務管理において昇進と昇格は異なります。
「昇進」は役職が上がることをいい、「昇格」は等級など社内資格が上がることをいいます。
なお、等級などの社内資格制度のない企業においては、
役職ポストによる職階のみとなりますので、
そのような会社では「昇格」という概念はありまん。
昇進は、組織のニーズによって役職ポスト(課長や部長など)が空くか、
新たに役職ポストが生じたときに、
その役職ポストにふさわしい人材を適材適所の観点から配置することです。
「処遇」ではなく「配置」であることがポイントです。
このように昇進は処遇ではなく、
今からその仕事(役職ポストに与えられる職務)を担うのにもっともふさわしい人材を選ぶ
行為ということになりますので、
その判断は昇格よりも複雑で、いろんな観点から人物を見ることになります。
全体的に能力が劣った印象のある人物でも、
何か秀でた特性を持っており、たまたまその時の昇進にその特性が役立つとなれば、
その人物が選ばれることもあり得ます。
もし、部下が昇進や昇格に対して疑問をもったり、不公平感・違和感を抱いた場合は、
上司として昇進と昇格の違いを冷静に説明できることが必要となります。
昇進の知識で部下のキャリア形成を支援する
残念なことに管理職になりたいと思う社員が激減しています。
その理由の一つに、残業が多かった社員が昇進によって管理職になると、
残業代が付かなくなるといったことがあります。
せっかくの昇進機会を得ながら、目先の賃金だけを理由にそれを断ることは、
収入面からも今後のキャリア形成面からも得策とはいえません。
上司としては部下と話し合い、「本当に昇進しなくて良いのか」
「いつかは課長(またはそれ以上の役職)に昇進したいという気持ちはあるか」
確認しておく必要があります。
課長に昇進しないという選択を行った場合、
それ以外に目指すべきキャリアや取り組むべきキャリア課題があるか否かも重要です。
まずは、目先の賃金だけで昇進する/しないを判断させるのではなく、
中長期にわたる今後のキャリアデザインを行った上で昇進を検討させることが大切です。
賃金処遇については、毎月の給料だけをみて実質的に下がると判断しがちですが、
賞与を含めた年収ベースで減少するとはかぎりません。
上司は部下が昇進を拒んだり、悩んでいる場合には、
長期的な視点で部下の人生のためには昇進はプラスになる、
処遇についてもプラスになることを説明できる知識が必要です。
部下が管理職になりたがる、そんな会社を一緒になってつくっていきたいものです。
部下に成長実感が得られる仕事経験を積ませる
人は仕事経験によって自分なりのキャリアを構築していきます。
20代であれば20代の、30代であれば30代の、50代になれば50代にふさわしいキャリアを獲得していることが望まれます。
そのキャリアを構築する源は自分自身の仕事経験そのものです。
したがって、上司が部下に対し「自分が育ててやろう」、
部下に出世意欲がないからといって「出世意欲を持たせよう」と、焦る必要はありません。
大切なのは上司が「部下の成長に関わるのが自分の喜び」という謙虚な気持ちをもちながら、
部下に成長実感が持てるような「いい仕事」を与え、経験を積ませることです。
「いい仕事」とは、仕事そのものの中に、次のような要素を含んでいます。
- 部下の年代にふさわしい仕事の質と量
- チャレンジ性があり、成長につながること
- 創意工夫や改善の余地があること
- 同僚やそれ以外の人たちとの間で、縦と横のコミュニケーションを要すること
- 部下の価値観や持ち味が活かせること
上司は「いい仕事」の要素を、部下の置かれた状況に応じて仕事に織り込み、
与えればよいのです。
要は、「いい仕事」とその環境が部下を育てるのです。
次回は「部下育成の基本はOJT」についてお伝えします。
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