学校では教えてくれない「ホンモノの資金繰り」の話
キャリアコンサルティングセンター
代表 小林 順一
第4回「在庫管理」と「設備投資」の失敗は致命傷になりかねません
資金繰りをやる上で忘れてはならないことがあります。
それは「眼に見えない札束」のことです。
どういうことかといいますと、それは「在庫品」と「設備投資資金」のことです。
眼に見えない「札束」のため、とかく放置されやすいのですが
この2つをうまく管理できれば資金繰りはかなり楽になります。
「在庫品」とは札束が変形して積み重ねてあるもの
在庫品というのは製品(商品)、部品(原材料)、仕掛品のことをいいます。
社長が現場に行ってこれを見て札束に見えてくればこの会社は安泰です。
倉庫にぎっしり製品が保管されていて、6カ月も動かない状態であったときに
「ああ札束が遊んでいる」
「資金が寝ている」
「これで苦しめられているのだ」
と即座に気づかないといけません。
その意味で、資金繰りの対策会議は倉庫の中で在庫に囲まれてやるのがいいかも
しれませんね。
迫力のある会議になること、必至です。
有名なトヨタの「カンバン方式」はこの考え方が原点になっています。
自動車部品の在庫が一定量以下になる基準点になる時点で協力会社に納入させれば
最少の在庫で済む訳ですね。
重点管理が資金繰りの決め手になる!
在庫品を圧縮するのに何百、何千もある品目の一つ一つの在庫を細かく管理していたら、
何時間もかかり、人手も掛けた割に効果は上がらないハメに陥ります。
それはなぜかというと消費金額の微小なもの、あるいは安価なものに対しても
同じように多大な時間を掛けて管理してしまうからです。
在庫というものは分析してみれば分かりますが、例えば、
全商品のたった15%の品目が在庫消費金額の85%を占めていることが分かれば、
この15%の品目だけを重点管理すればよいのです。
この考え方で15%の品目の在庫を10%圧縮すれば資金繰りはかなり楽になります。
設備投資は慎重にやるべし!
社長は、もう一つの「眼に見えない札束・設備投資」もよく見なければなりません。
設備投資は、投資するだけの効果があるのだろうか、という投資効果の予測を
厳しくやってからにすることです。
高い金額で購入する訳ですから、
それが過剰投資になればたちまち資金不足を招くことになるからです。
ポイントは
- 長期計画に基づいて投資計画を立てる
- 投資案の採算計算を必ずやること
- その案件の資金計画を立てる
- 年次の設備予算を立てる
ということです。
これを実行しないと
どんな弊害が出てくるのでしょうか。
まず3年くらいの長期計画を立ててから大型固定資産へ投資しないと
失敗した時(効果が出ない時)倒産の引き金になる恐れが充分あります。
特に最新鋭機械によって生産性向上や原価低減を目指すものについては
厳しい採算計算が必要となります
また、設備投資の資金計画を全て借入金でまかなうというのでは
資金繰りが苦しくなるでしょう。
設備投資には、投資額に対する資金調達の計画をきちんとやることですね。
「在庫品」はなぜ「札束が積み重ねてあるもの」なのか
それでは再び、在庫品のお話に戻ります。
「在庫品」はなぜ「札束が変形して積み重ねてあるもの」なのでしょうか。
わたしは新入社員のころ、工場にいたのですが、
なかなかこの意味が理解できませんでした。
在庫は資産、いわば財産であり「なぜ財産が増えるのが悪いのか」と素朴に
考えておりました。
貸借対照表、損益計算書は分かっても、
経営の核心である資金収支(キャッシュフロー)が分かっていなかったのです。
在庫が増えてなぜ大変なのか。それは資金が詰まるからです。
これを企業の経営者は、
別に学校で教えられている訳でもなく肌で身につけてくることですが、
それを理屈にすると「営業キャッシュフローにおける在庫増減の影響」ということに
なります。
在庫を持つということは、問屋なら仕入れ代金の支払いを、
メーカーなら材料代の支払い、工賃も支払いを伴っています。
この在庫が売れればお金が入ってきますが、
在庫である限り、その費用は先に出ていったままであり在庫の中に埋もれたままで
回収できていないのですね。
つまり在庫増は、経理的にみれば「支出の大きな増加要因」となっているのです。
在庫を見て「札束が積み重なっている」というのはそういうことです。
次回のテーマは
<銀行員とのお付き合いの重要性を認識していますか>です。
[次へ]