学校では教えてくれない「ホンモノの資金繰り」の話

キャリアコンサルティングセンター

代表 小林 順一

第5回 銀行員とのお付き合いの重要性を認識していますか ~銀行の企業の見方と融資の仕組み~

わたしはかつて大手電機メーカーの経理部門にいたときに

関連会社(中小企業)の立て直しでその会社に出向したことがあります。

 

1年間ほとんど毎日、資金繰りばかりやっていました。

 

そんな縁で後になってその会社に経理管掌役員として転属することになるのですが、

今回のお話は出向時に私が経験したことをお話ししたいと思います。

銀行員は企業のどこを見ているのでしょうか

わたしの出向した会社は東京の中野に本社がありましたが、

そのとき私は社長とたびたび近くにあるM銀行を訪れました。

 

M銀行はこの会社の主力銀行でしたから継続して預金もし、

また従業員の給与振込事務もお願いしておりました。

 

またこの銀行からの融資は、当時はこちらから融資をお願いするというのではなく、

むしろご先方の融資営業に協力しているという形で親密なお付き合いを

させていただきました。

 

この普段からのお付き合いは、いざ資金繰りが厳しくなったときにモノをいいました。

銀行が当社の事業の将来性と幹部のやる気を評価してくれて、融資に応じてくれ、

親身になって助言してくれたのです。

 

もちろん銀行の支店長もよく当社にぶらりと訪問してくれ、

地域や他業界の情報交換をすることができました。

 

さてこの支店長が当社を訪れたときに、

わたしはこの方に「企業のどこを見ているのか」お聞きしたところ、

ざっくばらんに話してくれたことが今でも印象に残っております。

 

それによると工場でも事務所でも、

その会社でまず見るのは「整理整頓」とのこと。

 

部品が通路に転がっていたり、倉庫の中が足の踏み場がないほど乱雑な場合

恐らくこの会社には「在庫は札束」の考えはないものと考え、

融資はする気にならないと言っていました。

 

また従業員がやる気のない会社の階段・廊下には

整理していない商品や伝票が山積みになっているとのこと。

 

そのほか、張り出してある予定表(目標と実績)は1カ月も更新されていないままで

なおかつ電話が鳴りっぱなしなのに誰も出ようとはせず、

従業員の無駄話が放任されていたりするともう怒鳴りたくなるそうです。

(わたしもそうですが)

銀行はどうやって融資を決めているのでしょうか

ある融資の案件を、実施するか否か銀行は次のような経緯で決めています。

 

融資担当者はまず

  1. この会社は予定通り計画を実現する力があるだろうか
  2. 融資資金を使う目的と、その資金を利用したことによる採算性

 

これらが妥当かどうか検討します。

また「その融資に対する担保はあるか。ない場合はその判断は妥当か」を検証します。

 

ところで銀行は、すでに取引のある会社の場合は、

会社別情報をファイリングしています。

 

ここには社長や経理部長との会話の記録や数年間の決算書の内容が綴じられてあり、

更新しています。

 

ちょうど会社の人事部にある社員別人事ファイルのようなものです。
人が会社に変わっただけですね。

 

これらの情報を参照してまず必ずやるのが「決算書の財務分析」です。

ここでの結果が相手に対する取引方針を決め、条件を決めます。


財務分析が終われば、次は信用格付です。

 

銀行は信用格付の等級に基づいて、取引先方針を決め、管理レベル

(資料の提出サイクルなど)を決めています。

 

融資課長は担当者からの分析・検討結果を受けて融資判断をします。
そして支店長や本部融資部と協議しているのです。

 

ですから企業側としたら、財務分析で良い評価をもらい、また信用格付で

良い等級をもらえるようにしておかなければならないのです。

 

決済には融資金額や信用額(無担保額)や融資期間に応じて

段階が設定されています。

 

支店長が判断できる限度があり、

この裁量範囲を超えて判断する場合は本部の融資部扱いとなります。

 

具体的には本部の融資部へお伺いをたてることになります。

融資部では支店からの「査定書」の内容を検討して

最終的に融資の可否判断をするのです。

 

■次回のテーマは

<資金繰りをめぐる人脈はできていますか>

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