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海外投資で知っておきたい4つの法制度

FutureVision株式会社
代表取締役 上原崇寛(たかのり)

第3回 出国税:国外転出時課税制度

『海外に住所を移せば、課税されずに済むのか?』

さて、海外の税率が低い国や、過去の有名な事件について、前回は触れました。

 

武富士事件は贈与・相続に関する税回避の例ですが、

では他にも、居住者と非居住者の違いを使った税回避は考えられないでしょうか。

 

「今、株の投資で儲かっている。まだ売却はしていなくて含み益の状態。

香港なら株の譲渡益に対して課税されない。

香港に住所を一時的に移してから売却すれば、譲渡益への所得税をかわせるのでは?」

 

残念ながら、

香港などの譲渡益への課税がない国に、一時的に住所を移して非居住者となっても、

所得税から逃れることはできません。

 

では、一時的ではなく、完全に日本を離れることにした場合はどうなるのでしょうか。

 

『国外転出時課税制度、出国税とは?』

今回はこの日本を出る際に必要となる出国税に関しての内容です。

2017年7月から施行された、国外転出時課税制度といいます。

 

この国外転出時課税制度により、課税を逃れるための海外移住は、

完全に意味をなくしています。

 

では、国外転出時課税制度とはどのような内容か。

簡単に言うと、

一億円以上の有価証券などを保有している状態で国外へ転出する際には、

その含み益に関して、所得税が課せられるというものです。

 

この制度のポイントは以下の3つだと思います

  • 対象資産は有価証券などであり、不動産は含まれない
  • 非上場企業の株式であっても課税される
  • 売却とは関係なく、含み益に関して課税される

 

課税対象財産は有価証券なので、株式・債券・投資信託が代表的なものになります。

この他、デリバティブ(金融派生商品)なども対象になります。

仕組預金や仕組債と呼ばれるものが、デリバティブの代表例で、

銀行や証券会社で、投資信託と併せてよく提案されるものです。

注意点は、FX取引もデリバティブのため有価証券に含まれることです。

 

『含み益に課税されることの問題点』

含み益に関して課税となる場合に、納税する側として非常に困るケースがあります。

 

例えば、非上場株式

「価値があるので課税されるけど、売れないから納税できない」という事態は

十分に考えられます。

 

資産の大半が自社株の企業オーナーは多く、

株式と現金の比率を比べると、現金の比率が圧倒的に小さいという状態は

よく見受けられます。

 

また、税回避を意図せずに課税対象に該当してしまう場合も出てきます。

 

例えば、非上場企業の株(自社株)を20%持つ社長のご息子が、

20代のうちは修行として働いている他社で、海外への赴任が決まる。

あるいは、MBA留学と考えても、同様の状況になります。

これらは十分に考えられる状況だと思います。

 

このように含み益のある有価証券が非上場株式で、

株式を売却もできず手持ちの現金もない場合はどうしたらよいのでしょうか?

 

『猶予期間中は、毎年届け出をする必要がある』

さすがに国も非上場株式や仕組債など、

すぐに売却できないものが多いことはわかっているのだと思います。

 

そのため、申請手続きをすれば5年間は納税猶予期間となります。

また、5年を超える長期となっても、延長の届け出を行うことにより、

さらに5年間の延長が可能です。

 

ただし、通常・延長関係なく、5年間の猶予期間中は、

継続届出書を毎年提出する必要があります。

 

『財産債務調書制度』

最後に、不動産は字のごとく不動ですので、海外に移すことができません。

 

このため、第一回で説明した国外財産調書や、

今回の国外転出時課税制度の対象財産には該当していません。

 

ただし、所得で2,000万円を超えており、かつ国外転出時課税制度に該当する方は、

同時に財産債務調書制度の対象にもなります。

 

財産債務調書制度により、所得2,000万円超で、

国外転出時課税制度分や、あるいは3億円以上の財産を持つ方は、

財産の種類や内容を、所得税の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

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