大不況を生き抜くための中小企業における新規事業の進め方
中小企業における新規事業の必要性
戦略組織コンサルティング合同会社 代表
関西大学 大学院 商学研究科 非常勤講師
村上 統朗
この不景気の中、既存の事業だけでも大変なのに、新規事業にまで手が回らないよ。
と思われるかも知れません。
しかし、実は、以下3つの理由により、中小企業における新規事業は必須といえます。
理由1:新規事業と企業継続
以下、2つの理由により、中小企業は絶えず新規事業を起こし、
新しい市場を切り開いていかなくては、今後生き残ることはできないと言われます。
① 製品寿命の限界
ほとんどの中小企業は単独製品事業であり、
プロダクトライフサイクルの影響を大きく受けやすい。
(プロダクトライフサイクルとは、製品寿命のこと。
一般的な製品に見られる時間の推移に伴う売上高の変化を言います。
時間を横軸、売上高を縦軸とすると、通常、以下の図のように、
導入期、成長期、成熟期、衰退期の4段階を経て、山型カーブを描きます。)
② 市場や業界の衰退化
製品だけでなく市場や業界自体が成熟化・衰退化している。
理由2:新規事業と事業承継
多くの中小企業において、事業承継の時期に来ています。
先代からバトンタッチを行おうとしても、製品・市場が衰退期にあたっていると、
バトンを渡す側、受けとる側の双方で躊躇してしまうケースが非常に多く見受けられます。
事業承継をスムーズに進めるうえでも、
先代に心身ともに余裕があるうちに、新規事業に取り組み、軌道に乗せ、
新たな事業展開の方向性を見出したうえでバトンタッチを行うことが求められます。
理由3:新規事業と人材育成
さらに新規事業に取り組むことは、
事業承継者や管理者が経営知識や経営ノウハウを習得する方法として最適です。
「人材は育てるのではなく、自ら育つ」という認識に立ち、
新規事業を成長する「場」として提供します。
新規事業という実践の場を通して、
経営者に求められる精神力、思考力、行動力が身につきます。
今までの職務・権限を大きく越えた現実の経営問題に直面し、
何らかの結果を出すことで、
経営者としての基本・視点を身につけることができます。
新規事業とタイミング
こうしてみて見ると、新規事業は中小企業にとって大切な取組みである
とお分かりになると思います。
しかしこういうお話をしても、
もう少し景気が上向いたら新規事業に取り組もうかな
といわれる経営者の方が多くいらっしゃいます。
残念ながら、その時にはすでに手遅れです。
少し景気が良くなった時は、回収の時期であり投資の時期ではありません。
また、新規事業を立ち上げるには試行錯誤が必要ですので、
ある程度の時間が必要です。
不景気の今、先行き不透明で社内も暗くなりがちですが、将来を明るくするためにも、
少しずつ新規事業に取り組まれることを強くお勧めします。
具体的にどのように風に取り組むべきかについては、
次号以降にてお話しさせていただきます。
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