大不況を生き抜くための中小企業における新規事業の進め方
新規事業にて、大怪我をしないための心得
戦略組織コンサルティング合同会社 代表
関西大学 大学院 商学研究科 非常勤講師
村上 統朗
新規事業にて、大怪我をしないためのポイントは2つあります。
- 単に儲かりそうだからなどと言って、安易に見知らぬ業界に飛び込まない。
- まず「誰に売るのか」を考える。
以下、詳しく説明していきます。
新規事業を釣りに例えると・・・
新規事業について話すとき、話を分かりやすくするために、
思考順序が似ている釣りの例えをよく使います。
まず、釣りに行こうとした時には、何を釣りに行くのかを考えます。(対象顧客)
鯛なのか、鮎なのかを決めます。
釣ろうと思う魚が決まれば、自ずと釣る場所が決まります。(対象市場・競合状態)
鯛であれば海、鮎であれば川です。
次に、どのような竿や仕掛けで釣ろうか、ということになります。(販売方法・ツール)
鯛であれば磯釣り用の竿、鮎であれば鮎釣り用の竿です。
そして、エサは何がいいかなとなります。(製品・商品・サービス)
また、魚を集めるのに撒き餌が必要であれば調達し、実施します。(広告)
最後に、釣れた魚は食べるのか、逃がすのか、どうしようということになります。
(アフターフォロー)
大怪我をする思考順序その1
~話題の釣り場なら、魚が釣れるかな?~
新規事業に取り組もうとすると、
以下の業界が経営者の方の頭に浮かぶことが多いようです。
以下の業種は、日々マスコミに取り上げられたり、
経営者の身近な企業が取り組んでいるため、自ずと意識してしまいます。
時流に乗ることは大切ですが、
注目度が高い業界は、競合も多く、競争が激しいのが実情です。
釣りの例えで言えば、
釣り人がたくさんいる釣り場で釣ろう、と思っている状態です。
今後のびそうだから、とか、儲かりそうだ、とかいう理由で
安易に見ず知らずの業界に飛び込むと、とんでもない大怪我をします。
万が一、リスク覚悟で取り組むにしても、
市場性・成長性・収益性や、競合他社・参入/撤退障壁などを
慎重に見極める必要があります。
大怪我をする思考順序その2
~持っているエサで、なにを釣ろう?~
大けがをしてしまう別の大きな失敗要因の一つに、
新たに取り組もうとする製品・商品・サービスから新規事業を考えてしまうこと
があげられます。
違和感があると思われますが、
買い手市場の現在、新規事業を考える時には、まず誰に売るのか?
ここが非常に大切です。
釣りの例えで言えば、
多くの企業に新規事業に対する取組みは、
製品・商品・サービス、つまり、「エサ」ばかりに着目する傾向があります。
すると、釣れれば何でもいい、売れれば、買ってくれれば誰でもよい
ということになります。
不況で右肩下がりの現況は、釣り場にあまり魚がいない状態です。
一方で、釣り人はたくさんいて、独自仕様の最新式の釣り竿をもっている人が多い
となると、なんでも釣れればいいでは、何にも釣れないのが現状です。
新規事業では、何をするのかも大事ですが、
それ以上に、誰に売るのかを明確にすることが新規事業のリスクを軽減する、
すなわち、大怪我をしない重要なポイントになります。
第3回では、新規事業へのあるべき取り組み方についてお話しいたします。
[次へ]