大不況を生き抜くための中小企業における新規事業の進め方

新規事業立ち上げのポイント

戦略組織コンサルティング合同会社 代表

関西大学 大学院 商学研究科 非常勤講師

村上 統朗

新規事業に対しじっくりと腰を据え深く考えることは絶対必要です。

しかし、それだけでは十分ではありません。

考えたうえで、実施・検証することが求められます。

 

前回は、何に取り組むかを考えるフレームをご紹介しました。

今回は、新規事業をどう立ち上げるかをご紹介します。

 

 

= 立ち上げ時に取り組むべきポイント =

確認ポイント1
購買想定顧客(魚)がいるか確かめる

新規事業プロジェクトを進めていくと、

だんだん自社に都合のいいように物事を解釈するようになりがちです。

すると、品質や価格設定などに目が行き、

ターゲット顧客のことを忘れてしまうことが多々あります。

 

第2回で釣りの例えをあげて申し上げましたが、

まず「魚がいるのか?」

つまり、お客様がいらっしゃるのかどうかを確かめることが大切です。

 

いつか売れればよい、だれか買ってくれればよいのでは

いつまでも売れない、だれも買ってくれないのが不況である現在の現状です。

 

お客様を明確にして、収益が見込めるかどうかを見極めなければいけません。

確認ポイント2
小さく生んで大きく育てる

『既存事業の落ち込みを、新規事業にて早く埋めたい』という焦りにより、

十分な調査もせずに大型の投資を決断してしまう、投資し続けてしまう傾向があります。

 

また、新規事業は不確実性が高いため、

一度に大きな投資は非常にリスクの高いものになってしまいます。

 

中小企業では、致命的な失敗が許されないため、

企業体力を考慮した範囲の中での取り組みが大切です。

確認ポイント3
いくつか新規事業のネタを準備し、実施してみる

試行錯誤の結果、どうしても思わしい結果が得られないこともあります。

そのような場合でも、一つの事業に惚れ込んで固執し、

意地になって取り組んでしまう方がいらっしゃいます。

 

そのような場合に備えて、第2、第3の新規事業案を準備しておくことも重要です。

 

= 立ち上げ時の実施ポイント =

立ち上げ時、上記3点に具体的に取り組む際には、

以下4点に注意して取り組んでいくことになります。

 

実施ポイント1
勇気ある意思決定の実施

新規事業に対してはどうしても慎重になりがちですが、

『あの時やっておけばよかった』『うちも同じことを考えていたのに』

というコメントを本当によく聞きます。

 

新規事業は未知のことが多いため、

決断したり、日々新規事業に取り組んだりするためには

熟考の上の勇気ある意思決定が求められます。

 

ここで逃げてしまうと前に進みません。

実施ポイント2
簡易テストマーケティングの実施

ターゲット顧客がいるかどうか確認するために、いきなり販売するのではなく、

簡易テストマーケティングの実施をお勧めいたします。

 

① 社員、取引先、友人・知人に試食・試用等してもらい、率直な感想を聞く

粗品、サービスとしてお客様に提供し、率直な感想を聞く

ヤフーオークション、楽天オークション等に出品し、反応を見る

モニター制度を設立し、試食・試用等してもらい、率直な感想を聞く

展示会等に出展し、生の反応を探る などです。

実施ポイント3
初期投資よりも運転資金重視

既存事業と異なり、新規事業はリスクが高く、

売上・利益をあげるようになるまである程度時間がかかります。

初期投資ばかりに目が行き、運転資金のことが忘れられている場合が多いですが、

広告費や営業費という運転資金を確保しておく必要があります。

実施ポイント4
事業ポートフォリオの構築

企業の事業バランスを整えるために、
新規事業、既存事業を含めた事業ポートフォリオを構築する必要があります。

(M.ポーターの言うストラテジック・グループ・マップ(戦略組織図)の作成を想定しています。)

 

事業ポートフォリオ(*)を構築することで、

今後どの事業に経営資源を集中すべきか、

各事業間の関連性をどうすべきかなどが明確になります。

*事業ポートフォリオとは、企業が多角化戦略を取った際のさまざまな事業群の組み合わせのこと

 

以上4点が実施されていない場合、

確認ポイント3点が充分確認できていないということになります。

 

次号最終回は、より具体的に新規事業を実施する上で

確認および明確にすべき項目についてご説明いたします。

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