環境ビジネスに低リスクで参入する方法
マーケティング発想の生かし方
株式会社エスト・コミュニケーションズ代表取締役
マーケティングコンサルタント
弓削 徹(ゆげ・とおる)
参入するべきはニッチな分野
2002年、土壌汚染に関する規制が強化されたタイミングで、
多くの企業が土壌改良などの環境ビジネスに参入しました。
しかし、現在ではほとんどの企業が撤退を余儀なくされています。
その理由は、どの企業も土壌改良の"ど真ん中"のビジネス領域を手がけようとしたため。
アメリカがゴールドラッシュに湧いた当時、金を追い求めた人びとよりも、
その人びとにスコップやバケツ、ジーパンを販売した業者のほうが儲かった、
というエピソードを思い出させる話です。
中小企業が参入するべきは、やはり周辺などのニッチな分野。
よい意味で小さな市場であれば、
あとから参入してきた大手企業や途上国の企業に売上を奪われることもありません。
地方企業、中小企業ほど有利な理由
環境ビジネスは地方企業、そして小企業こそ有利だという特質があります。
地方企業こそ有利なのには、次のような理由を挙げることができます。
*すぐれた環境技術は地方にある
*エネルギーは地産地消、地域分散型へ
*地元企業は自治体と住民理解が得やすい
全国各地を回って環境ビジネスへの取り組みについて取材するなかで、
どの地域にもユニークな技術の蓄積があることに気づかされました。
また、リサイクルや処理場など地方自治体の許認可や地元住民の理解が必要な事業において、
他所から来た企業は不利であるといわざるをえないでしょう。
さらに、小企業にこそチャンスがあるのは次のような理由からです。
*スピードが必要な環境市場に対応できるのは小さな企業
*大企業が参入してこない規模の市場こそ有望
*大手企業ほど迷走し、失敗している
ヒト・モノ・カネがじゅうぶんではないと嘆く前に、地域で蓄積しているノウハウや、
自社のフットワークの軽さを生かして参入のチャンスを見つけて欲しいと思います。
つかむべき3つのニーズ
環境ビジネスは、実は古いビジネスであるともいえます。
1960年代からの公害対策、そしてオイルショックに起因する省エネビジネスなど、
過去に何度か市場拡大のタイミングがありました。
それは、産業廃棄物規制、排ガス規制など、いずれもが
新しい規制の登場によるものであり、民間企業はそれに引っ張られただけでした。
つまり、環境ビジネスには、目の前のお客さまの純粋なニーズだけでなく、
政府や行政の動き、それと関連する世論の方向性をもつかんでおく必要があるのです。
*環境ビジネス3つのニーズ
(1)顧客企業から望まれるモノ、サービス
(2)行政・自治体が注力する分野
(3)世界的傾向や社会全体の流れ
これらの動向を複合的に把握し、本業の技術などと照らし合わせる必要があります。
その際、従来タイプの「マーケティング調査」などではなく、業界紙誌・ウェブの精読や、
関連省庁への聞き取り、セミナーや専門家の意見に耳を傾けるなどの、
リアルな情報収集に努めることがカギとなります。
時間とおカネをかけて過去の調査データを入手するのではなく、
今日の新鮮な情報に接して、意思決定をすることが大切です。
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