環境ビジネスに低リスクで参入する方法
コストをかけない顧客の見つけ方
株式会社エスト・コミュニケーションズ代表取締役
マーケティングコンサルタント
弓削 徹(ゆげ・とおる)
モノを売るなら、カオを売る
環境ビジネスへ参入したのはよいけれど、いちばん問題となるのは販路開拓です。
そのとき重要なのは、ビジネスのどこを、どのようにアピールしていくのかということ。
マーケティングではブランディング計画などといったりしますが、
「カオを売る」と表現すればわかりやすいでしょうか。
カオを売るとは、
伝わりやすくわかりやすい"カオ"を前面に押し出したコミュニケーションをおこなうことで
お客さまとのあらゆる接点で印象を強め、顧客開拓をしていくやり方です。
しかも、なるべくコストをかけずに顧客を発掘していくことが理想ですので、
とにかく社内にある資産を生かして売上につなげる方法をねらいたいところです。
①ウリを明確に定めてカオにする
環境製品であれば、その開発コンセプトからウリを抽出することになります。
商品開発はニッチ市場に向けたものにするべき、と先に書きましたが、
くわえて、その特長を切実なニーズを満たす切り口で表現するよう心がけてください。
「あったらよいが、なくてもよい」商品ではなく、「なくては困る」商品として位置づけるのです。
たとえば、企業にとって無停電電源装置や自家発電設備は、
BCP、つまり事業継続上の切実なニーズを満たすものになります。
売り先を絞り込む際も、
商品に対して切実なニーズを持ってくれる見込み顧客を中核とするのです。
②すでに社内にある資産を生かす
社内でいちばん大きなカオをしている、つまり人脈が豊富なのは社長です。
究極のトップ営業として顧客やビジネスパートナーを見つけ、
ときには講演をし、メディアに出てもらうことで、
自社商品を知ってもらう機会を拡大することができます。
そして、顧客のヨコのつながりや商工会・商工会議所や公的機関のマッチング、
金融機関の紹介などをも呼び込むのです。
また、社員のデスクには無数の名刺が眠っています。
過去に取引を断られた会社、いまはもうつきあいのなくなった会社など。
しかし、相手企業も昔のままではありませんし、
こちらも環境ビジネスという新規事業に取り組んでいます。
そこで、すべての名刺を召し上げてリストを作成し、優先順位をつけて活用するのです。
Aランクはトップ営業、Bランクは定期訪問、CランクはメルマガやFAXレターを送るなど。
環境製品やサービスは、
いつ必要になって発注するかというタイミングがわかりにくいものです。
技術紹介や助成金などの役立つ情報を届けながら、
見込み顧客とほどよい接触を継続していることが受注にはたいへん有効です。
③ 展示会・プレスリリースを活用する
展示会は商談の発掘に有用ですが、かなりの予算がかかります。
一方で、国や都府県、省庁などが主催・後援する展示会は格安で出展できる場合が
少なくありません。
海外の展示会であっても、実費程度で出展できるチャンスもあります。
展示会において最大限の効果を上げるには、
メッセージなどの表現を会期前にじっくりつくり込んで発信すること、
また接触できた見込み顧客を後できちんとフォローすることが重要です。
プレスリリースにおいて環境関連は取り上げられやすい傾向がありますが、
今後は斬新な切り口やストーリー性が求められるでしょう。
プレスリリース作成のコツとしては
(1) 5W1Hでポイントを整理する
(2) 差別化となっているポイントを探す
(3) 差別化が弱い場合は別の情報・要素を加えてみる、などが挙げられます。
くわえて、やはりここでも「切実であること」を決定的な要素として挙げておきたいと思います。
防災や節電に役立つ製品、補助金の対象になる製品、資源を有効活用できるなど、
「このことを知らせないと読者・視聴者が困る」情報に仕上げることが有効です。
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