環境ビジネスに低リスクで参入する方法
感情の流れ・情動原則を接客に活用する
情動心理学開発研究所代表
小山 祐敬(ゆうけい)
商売を行う上で欠かせないものの一つが、ヒトです。
売る側と買う側にそれぞれヒトがいなくては商売は行えません。
そのヒトの心の構造と感情の流れを理解・活用することは、信頼関係の構築や安心づくりに役立ちます。
心の構造を接客に応用すると、どんなことがわかるでしょうか。
心の構造
第一回で説明しました心の構造を簡単に振り返ってみます。
人間行動の背後にあるその司令塔を、自我と呼びました。
その自我を動かしている背後に感情や欲求等があります。
それらの原動力、エネルギーの源ともいえるのが "喜びを求める衝動"です。
人の行動は全て、この喜びを求めるところにその原点があります。
心の構造と行動の関係
感情は時に、意識や理性、身体の神経伝達よりも早く身の回りの対象を識別する役割を担っています。
喜びをもたらしてくれる対象には、安心感、親近感、好感、同情、愛情等という正の情動が発生し、逆に、自らの喜びを疎外する対象には、不安感、不満感、嫌悪感、恐怖感、怒り、憎しみ、嫉妬等という負の情動が発生します。
情動脳の反応
6か月の胎児から生後3か月間に最も早く形成されるのは正負の情動をつかさどる大脳辺縁系=情動脳(哺乳類脳)です。
この時期、小さな生命にとって正負いずれの対象が多かったかで後の反応の仕方の基礎ができてしまいます。
人それぞれに顔かたちが違うように、喜びを感知する対象に違いはありますが、基本的に哺乳類としての共通要素=情動脳は誰もが持っています。
よほどのトラウマが無い限り、ふさふさした毛の仔犬を撫でてやりたくなるものですし、逆にゴワゴワした毛の大きな熊を撫でてみようなどとは思いませんね。
情動脳の原則の接客への活用
人間は経験則からも、自分より劣位、低位にあり、喜びを刺激する存在には親近感という正の情動が生じることを知っています。
自分が相手から親近感や思いやりを得たい時には、自然に低姿勢になりますし、劣位性を示すためにボディランゲージを使って、自由に体を動かさずに固まるという不自由な表現を選択しています。
情動脳の原則を活用して商行為を図れば日本古来の近江商人に代表される、売り手良し、買い手良し、世間良しの三方良しの商道で、どこにも不安や困惑を生じさせないビジネスとなり得ます。
接客に向ければおもてなしやホスピタリティーと表現できるでしょう。
情動脳の原則が上手く働かないわけ
しかし、人間は経験則から、この情動脳の原則が欺きにも使われることを知っています。
例えば、情動脳の原則を違法行為の範疇で応用すればオレオレ詐欺や結婚詐欺になります。
人間が感情のままに行動すれば、衝突や闘争が絶えないため、私達の自我の中には調整機能としての理性があります。
この理性は手痛い経験を基に警戒心を育てます。
情動脳の原則が働く前提
筆者が出会ってきたトップセールスマンは全て心からの自然な思いやりや挨拶で接客をしていました。
その次に専門知識で信頼され、効率の良い行動力で顧客を増やす人達でした。
いまや、大人も子供も情動脳の原則を知っておりそれを逆手に取る人間が決して少なくないことも認識しています。
真に信頼されるためには、低姿勢もボディランゲージも偽りの無い素直な自然の心から発せられなければなりません。
手痛く傷つき裏切られてきた人の心にも響く真の接客姿勢が築かれるなら、信頼感・安心感と共に人々の購買意欲は刺激され、商品やサービスを購入したくなるはずです。
では、人々の購買意欲が刺激されるような信頼感・安心感をどのように構築していくのか、次回以降、情動心理の観点からこの課題の解決策を探ってみます。
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