高収益をもたらす優良顧客の創り方
〜ロイヤルカスタマーは中小企業を救う〜
流通コンサルタント
高橋 秀樹
第3回 顧客をしぼりこむ勇気
市場の伸びと中小企業の戦略
市場全体が伸びている時代には
どの会社もシェアを伸ばすことが業績に直結すると
信じて疑わなかったことでしょう。
今でも事業計画にシェア拡大を指標に盛り込む企業は少なくありません。
市場全体の伸びが鈍化または停滞した現在は
シェアを伸ばしても業績が伸びるとは限りません。
全体が沈んでいるからです。
しかし、もっとより多くライバルから顧客を奪うことで
売上を上げようと熾烈な戦いが繰り広げられている業界もあります。
例えばビール会社や携帯電話会社の競争が目につきます。
一方で既に成熟してシェアの取り合いに限界がある業種は
統合合併が盛んです。
銀行やガソリンスタンドがその例です。
吸収される会社は事実上、市場からの撤退です。
更に市場が衰退している業界になると
残存マーケットを取ったもののみ生き残るという状態です。
圧倒的な1社と零細数社しか残りません。
残念ながら、経営者が勉強すべきである
経営戦略やマーケティング関係の本、有名経営者の成功事例本の多くは
拡大成長時代のノウハウが殆どです。
大差の無い品質、同じ様なコモディティ化した商品は
広告宣伝に多額のコストを掛け
より広く大勢の顧客を獲得しようとします。
広告宣伝も品質や性能のアピールではなく、
芸能人を使いイメージ戦略で顧客の印象にし
あらゆる層に受けるブランドを目指そうとします。
資金があり王者を狙うのであれば
全ての顧客を相手にする必要があります。
資金が無い、人材がいない、事業規模が小さいという場合は
すべての人を相手にするのではなく、絞り込む勇気が必要です。
鶴翼の陣と魚鱗の陣
すべての人を相手にするのか
それとも、顧客を絞り込むのかというのは
孫子の兵法でいうところの
鶴翼の陣と魚鱗の陣の違いです。
鶴翼の陣とはその名の通り
鶴が翼を広げた様なスタイルで
敵を包み込んで殲滅させる戦術です。
敵との兵力差が大きい時に使われる方法です。
一方、魚鱗の陣とは
敵に対して一点突破をする方法で
兵力数が敵に対して少ない時など
敵の本陣へ突っ込み目的を達成するという方法です。
敵の大多数を倒すことはできませんが、
大将の首を狙うという目的を少数で達成するための方法です。
昨年大河ドラマ「真田丸」のオープニングテーマの終盤で
赤備えの真田群が敵陣に突っ込む姿がありました
これがまさに魚鱗の陣の戦い方です。
経営資源の少ない会社は魚鱗の陣の戦術を使い
限られた資源を集中するべきです。
あらゆるお客様に支持され様とするのではなく
顧客を絞り込むことが大切です。
顧客を絞るというのは、年齢や性別で絞るのでは無く
利益を継続的にもたらしてくれるロイヤルカスタマーか
一時的な顧客なのかを見極めて絞るということです。
すべてのお客様に最大限の満足を、という考えは幻想です。
もしその様な施策を実行すると、
すべてのお客様に中途半端な満足を提供し
ロイヤルカスタマーにとっては不満足という結果になります。
ありがたいお客様を見極めて、
「我が社はあなただけを満足させます。」という戦略を取るべきです。
自社に利益をもたらせてくれる
ロイヤルカスタマーだけにフォーカスしましょう。
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