中小企業が直面している緊急課題と乗り越え策
株式会社武田マネジメントシステムス
代表取締役 武田 哲男
掲載日:令和元年5月23日
第3回 産業革命以来の「分業・モジュール化」の限界と乗り越え策
効率化・スピードアップ・コストダウンも限界?
手工業から工場生産に移る18~19世紀のいわゆる産業革命は、
生産技術・機械化・動力源の変化と共に
急速に大量生産(マスプロダクション)、大量販売(マスセールス)にと移行しました。
それに伴い効率化が図られ、
分業・モジュール化とスピードアップ、コストダウンが進行しました。
そして、その影響はサービス分野にも及び、高度情報化社会の到来と共に
人間に代わるAI(人工知能)を備えたロボット・各種機器などにと
更に変化の速度を早めています。
反面、そのメリットは限られた企業に集約され始め、
従前の多くの企業経営が成り立ちにくい環境を生み出す時代を迎えています。
こうしてモノづくりも、
サービス業もいわゆるコモディティ化
(雑貨商品のようにどの商品の価格も品質も形態も機能もほぼ同類・同質化)により
顕著な差が生まれにくくなっています。
例えば外食チェーン店では、
スタッフ募集で応募した人に立ったままの20~30分の説明で、教育・訓練なし。
直ぐに職場作業開始。
料理の注文を受け、料理をテーブルに運び、空いた器を下げる
人間ロボットのような取組みがそれです。
ご来店の顧客にも色々と作業の協力を得て、その分だけ料金を下げる方式、
つまりお客様をもロボット化し、次のステップではが機械にコインを入れれば
後はAIロボットが全てやってくれるなどとなりかねない?
・・・のシーンが思い浮かびます。
この質問にお答えになれますか?
「いま、世の中に存在しない商品・サービスで貴方が欲しいのは何ですか?」と
セミナーや研修会で質問すると、聞かれた人は一瞬、息を飲んで固まってしまいます。
昔なら、冷蔵庫が欲しい、TVが欲しい、乗用車が欲しいや、
イタリー料理を食べてみたい、海外に行きたいなどが挙げられたのですが、
今は持ちたいモノを一通り持ち、体験したいサービスを体験した人々の時代だから
こその現象です。
それでは
どのようにして顧客が答えられない潜在ニーズを見つけたらいいのでしょうか?
方法は幾つかありますが、
実際に成果を上げている方法の一つに挙げられるのは
顧客の「何気ないグチ」「困っていること」「不満」を知る方法です。
実例を挙げて見ましょう。
ビールの販売が伸び悩んだ時期の話です。
運送会社のトラック運転手と酒販店のご主人は
「大瓶のビールが重い」とグチを言っていました。
そこで、キリンビールは1997年から大瓶の瓶の重さを20%削減しました
(内容量は変えずに・瓶はラミネート加工)。
すると、物流経費が10億円削減、酒販店では大瓶ビールの仕入れが増えました。
これは正にグチの課題に取組んだ大きな成果です。
このように、
顧客が心の底で求めている何かを知る方法で、いま経営で成果を上げているのが
「不満足度調査®」なのです。
この調査から浮上するのは顧客の潜在ニーズです。
顧客の心の底に潜んでいる『不』の要素は、顧客が求めていることだからです。
そこで、『不』から得た課題をいくつかの要素と共に『融合』し形にするのです。
いま「発明」は容易ではありません。
しかし、この方法から新製品・新サービス・新システム・新設備・新人財育成が
成功しています。
そして、それらの『融合』を図り、相乗効果、高付加価値を創造しているのです。
何を融合するかは業種や企業により異なりますが、
顧客の潜在ニーズを浮彫りにする調査票の設計と分析にノウハウが存在します。
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