マテリアルフローコスト会計で経営改善
株式会社フォレスタ経営
代表取締役・中小企業診断士 森 尚子
第3回 「ロス(損失)」に対するいままでの考え方との決定的な違い
それでは今回は、
いよいよ具体的な事例を用いて一緒にMFCAの考え方を体験してみましょう。
機械加工の例(工程1)
工程1は、1本100cmの棒材を10cmにカットする工程です。
この工程で出来たのは10cmの製品(アウトプット)が9本でした。
また、その9本中1本が仕損品でした。
財務会計の考え方
さて、この場合、財務会計、つまり、今までの考え方ではどのように考えるでしょう。
財務会計とは、税務署や銀行など、企業外部へ公表する決算書等を作成するための会計です。
まず、「1本の仕損品」に注目します。
この仕損品にも原価が発生していますので、その分、損失(ロス)になっている
という考えです。
原価には、材料費だけでなく、労務費や間接費なども含まれます。
ここで重要なのは、出来てしまった「1本の仕損品」に注目している、ということです。
つまり、仕損品がゼロであればロスは発生していない、という考え方が基本なのです。
さらに深く言うと、今以上のコストダウンしようとすると、
仕損品をゼロにするか、もしくは材料費や労務費などを削減するしかないのです。
MFCAの考え方
一方、MFCAはどのように考えるでしょう。
まず、
そもそも100cmの棒材を10cmにカットして9本しか製品が出来なかったのは、
最適なのだろうか、という疑問です。
単純に10×9=90ですから、残りは10cmあるはずです。
その残り10cmはどこに消えたのでしょう。
答えは、端材と切削屑です。
機械加工をご存じであれば、当たり前のことであり、十分認識されていることで、
製造工程の基準として発生して当然のモノです。
しかし、MFCAは、この端材と切削屑も損失(ロス)と考えます。
MFCAは、「1本の仕損品」だけに注目しているのではなく、
「その工程での製品(次工程のインプットになるモノ)以外のモノすべて」に
注目しているのです。
ここではそれが「1本の仕損品」と「端材」と「切削屑」です。
つまり、今以上のコストダウンをしようとすると、
仕損品以外にも、端材と切削屑が対象になり、改善の余地が広がることになります。
ロスが出た工程内だけで考えない
それでは、端材と切削屑が出ないように、もっと技術を磨くしかないのでしょうか。
技術を磨けばコストダウンできる、というのでしょうか。
いいえ。そうではありません。
MFCAは会計手法です。
コストダウンできる対象を明確にしたら、次にそれを金額で表現して、
例えば、端材はいくらのロスで、切削屑はいくらのロスなのか計算します。
そのうえで、なにを、どのようにすれば、いくらコストダウンできるか考えるのです。
そのためには、ひとつの工程だけでなく、複数の工程で考えた方がわかりやすいです。
次回は、次工程も定義して、合わせて考えてみましょう。
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