マテリアルフローコスト会計で経営改善
株式会社フォレスタ経営
代表取締役・中小企業診断士 森 尚子
第4回 マテリアルロスの見える化
前回は機械加工の例として工程1を用いて考えてみました。
今回は、次工程2と合わせてMFCAの考え方を体験してみましょう。
機械加工の例(工程2)
工程2は、工程1で出来た製品(10cmの棒8本)に穴を開ける工程です。
この工程で出来たのは穴の開いた10cmの製品(アウトプット)が8本でした。
仕損品はゼロでした。
工程2では切削屑のロスが確認できたと仮定します。
工程1のインプットである100cmの棒材が、
最終的には穴の開いた10cmの8本の棒になったのです。
つまり、それ以外はすべて「マテリアルロス」になったことになります。
マテリアルロスの見える化
さて、では全工程を通して改善すべきことを考えてみましょう。
まず、そのマテリアルロスを見える化するために、全工程を通して、
単位を統一する必要があります。
なぜなら棒材はcmで表現できますが、切削屑はcmで表現できません。
通常、MFCAでは単位を重量で統一します。
ここではg(グラム)を利用することにしましょう。
図のように、
1000gの原材料から、80g×8本=640gの製品ができたことになります。
よって、1000g-640g=360gのマテリアルがロスになったといえます。
では、どこで360gがロスになったのでしょう。
この図のように、工程1で320gのロス、工程2で40gのロスが発生しています。
これがマテリアルロスの見える化です。
これをコストに置き換えて考えてみます。
例えば、1000gの棒材が1本10,000円だとすると、
ロスになった360gは3,600円になります。
なんと、原材料の36%は無駄になっているのです。
もったいないと思いませんか?
いかがですか?
いままでの財務会計で把握できていたロスは、工程1の仕損品(85g)だけでしたが、
MFCAでは、全工程を通して360gのロスが把握できました。
改善活動は全社の取り組み
さて、ロスが見える化されたあとは、改善計画を立てて実施することになります。
ロスをゼロにするのが理想的ですが、
機械加工で切削屑をゼロにすることは難しいでしょう。
実は、マテリアルロスは主に加工現場で発生していますが、
そのほとんどは現場に責任はないと言われています。
今回のような場合は、例えば、工程1の端材を減らすために購買部門と生産管理部門が
協力して検討し、原材料の調達内容を変更する、という改善が有効かもしれません。
改善活動は、経営トップの決断で、関係部門が一体となって取り組むべき課題なのです。
次回は、MFCAで着目するもうひとつのロス、エネルギーロスについて説明します。
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