M&Aによる事業承継を考えた会社のオーナー社長が知っておくべきこと
経営コンサルタント 兼
製造業および小売店舗オーナー
中沢光昭
第3回 理想の相手を幅広く探す
理想の相手を見つけようとすれば、
選んだ仲介会社に任せておくだけで安心というわけにはいきません。
仲介会社に自社の特徴・希望を伝えていきましょう。
ここで望ましい仲介会社を選別できることもあります。
事業承継先は同業他社とは限らない
取引成立に重きを置く仲介会社では、同業他社を中心に引き受け手を探しがちです。
ところが実際は、同業者が高く評価するとも限らないものです。
むしろ、該当する事業・産業に参入したいと思っている周辺業界の方が、
高く評価することが多いというのが筆者の感覚です。
特に、顧客をしっかりと持っていたり、自社ブランドの製品やサービスをもっていたり、
良い立地や従業員の店舗を持っていたりといった条件があると、なおさらです。
通常、規模が大きい会社の相手探しは、
仲介会社が用意した、関心を示してくれそうな相手のロングリストから
諸々の条件を勘案して絞ったショートリストに載っている相手に
個別にコンタクトしていってもらいます。
ところが中小規模の会社の場合ではそこまでは丁寧に行わず、
仲介会社同士のネットワークで概要情報を共有して、
関心を示しそうなところを募るケースが多いです。
最近では不動産業界で言うところのレインズを目指すべく、
M&Aを希望する中小企業や事業のデータベースがいくつか立ち上がってきて、
急速に盛り上がっています。
しかし、仲介会社同士のウェットなネットワークでのやり取りの方が依然として多いのが
現状です。(少し先の未来においてははわかりません)
そうしますと、たまたまその情報を受け取った仲介会社の担当者の頭に、
(さらに)たまたま買い手候補が浮かんでくれたかどうかという、
偶然や人の資質に振り回されてしまうことになります。
仲介会社をリードする
そこでお薦めなのは、情報を回してもらう前に、こちらがリードすることです。
まず、
「●●の業種・業態の会社なら関心持ってもらうに違いない」などをつけておきます。
すると、受け取る仲介会社の方でも、担当者の質にあまり作用されずに、
「そっか、そういう会社だと、自分たちのネットワークのところに**があったなあ」
と、考えやすくなります。
その際に、相手にとって魅力的でわかりやすい自社の特徴を示せるといいでしょう。
「自分たちは健康食品の販売を通じて高齢者への販売力や顧客基盤があるから、
高齢者相手のサービスを扱いたいと考えているところがいい」などです。
ここでなかなかそのキャッチフレーズが浮かばないようであると、
本質的にそもそも価値を見出してもらいにくく、苦戦することが予想されます…。
また、「我が子のように可愛い会社を譲るのはどんな相手だったら良いか」という点を
仲介会社に伝えておくのも良いでしょう。
その際、忘れずに、従業員がどんな相手を望むかも考えましょう。
買い手にとっては株を手放す人の感情・想いよりも、
残る従業員が今と同等、それ以上に頑張ってくれそうかどうかがはるかに重要だからです。
そのため、従業員にとってモチベーションが上がりやすい形になれば、
最終的に価格に反映されると考えられます。
加えて、事業上のシナジーを生んでくれそうなところに引き受けてもらう方が、
従業員にとっても幸せなのでその方が良いでしょう。
このような自社の特徴や希望、考えについての説明を、
仲介会社の担当者がきちんと丁寧に聞いて、相手に伝えようとしてくれているか否かは、
第2回で述べた仲介者選びにおいての大きなポイントだと考えています。
会話をしながら価格、売り方、売った後などの点がクリヤになっていくような、
対話のできる仲介会社に依頼するのが望ましいでしょう。
(つづく)
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