中小企業のコストをかけない、効果的な人材採用・定着・育成法
フリーライター
吉田典史
第2回「書類選考・面接」で、定着する人材の見抜き方
社員の「定着」と「採用」は表裏一体
「定着率」を向上させる場合、「採用力」を高めることが不可欠です。
「採用力」を高めるうえで、1つのポイントが「書類選考」となります。
求人広告を出すと、一定数がエントリーします。
転職の回数が多い人は、書類選考の段階で不採用にするべきです。
1つの目安として、30代前半で、自社にエントリーするのが4つ目の会社ならば、
その人は「転職回数が多い」といえます。
これは、私がここ20数年、取材で接した中小企業の数百人の採用担当者の6~8割が
「書類選考を通過させるか否かの1つの目安」として話していたことです。
ベテランの採用担当者は、こんなことを話すときもあります。
「転職回数が多い人を採用すると、上司や周囲の社員とトラブルを起こす傾向があります。
皆と良好な関係をつくり、仕事をしていくことが苦手な人が多いのです」
転職回数の多い人は、よくも悪くも自分の価値を強くもっている
私がここ10数年、解雇や退職勧奨などの労使紛争に巻き込まれた中小企業の
経営者150~200人を取材すると、その半数以上がこう答えます。
「トラブルを起こした人は、転職回数が多い人だったが、
書類選考や面接試験で、そのことを正確に見抜けなかったのです」
書類選考や面接試験などで学歴や職歴に魅力を感じ、内定を出したものの、
いざ入社をさせると、トラブルメーカーだったというのです。
60代後半のベテランの中小企業の経営者が、私の取材で答えていたことです。
「転職回数の多い人は、よくも悪くも自分の価値を強くもっています。
それは得てして、中小企業の価値観とはマッチしないものなのです。
そこに目を向けることなく、学歴や職歴や、面接の場での受け答えや雰囲気に
注意を奪われ、採用をするから失敗に終わるのです」
ぜひ、思い起こしていただきたい言葉です。
「勤務した会社の入社理由や退職したいきさつ」がポイント
「書類選考」の次には、「面接試験」となります。
面接では、これまで勤務した会社を辞めた理由やいきさつなどを納得いくまで聞くことを
お勧めします。
たとえば、4つの会社に在籍してきた人ならば、それぞれの入社や退職の理由を
丁寧に確認するのです。
もちろん、前職などでの仕事や内容、スキルなどは聞いておくべきです。
しかし、優先順位でいえば、まずは入社や退職理由です。
1回の面接につき、面接官は少なくとも2人から5人にはしましょう。
社長、役員、採用する部署の管理職、非管理職の中のリーダー格と中堅社員、
さらに、総務・人事・経理の管理職やその部署の社員にも参加してもらいたい
ところです。
「勤務した会社の入社理由や退職したいきさつ」などを聞いていくとき、
エントリー者の受け答えの内容や表情などを多くの人の目で確認するのです。
面接官のうち、3分の1が「どうも嘘をついているな」「おかしいぞ」などと思ったときは、内定を出すべきではありません。
その直感は、入社後、現実のものとなる可能性があります。
前述の、労使紛争に巻き込まれた経営者たちのほとんどが、こんなことも話していました。
「トラブルを起こした人を雇うとき、実は、内定を出すかどうかと迷ったのです」
転職回数の多い人と、内定を出すかどうかと迷う人―。
これらの人たちを採用しないようにするだけでも、
「定着率」はしだいに上がっていきます。
1回目の記事で紹介したように、
中小企業で採用をするうえで重視するべきは、次のポイントです。
うちの会社の社風や文化に合うか、合わないか。
自分たちの部下として、仕事をきちんとできるか否か。
信頼し合える仲間になれるかどうか。
そして、心からその人を好きになれるか…です。
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