事業承継を円滑に進める人材戦略
Thermalworks株式会社
富平晃行
第3回 「プロフェッショナル人材」確保のための採用戦略
円滑な事業承継に欠かせない人材戦略は、
将来の会社のやりたいこと、理念、事業ビジョンの設計から始まる。
そして、次期社長がこの設計に深く携わることが「社長の右腕」探しの第一歩だといえる。
プロフェッショナル人材採用のねらいと効果
大量生産、大量消費時代は遠く過去のものになりました。
今までと同じことをしていたのでは企業の成長は見込めないという実感は
皆様が強く意識されていることではないかと思います。
顧客、消費者のニーズに適応し続けること
新たなマーケットを開拓すること
新たな付加価値を提供できるようになること
そうした不断の企業努力が成長には不可欠です。
この成長の鍵を握るのが「プロフェッショナル人材」です。
他社で豊富な経験やノウハウを積んできた人材を自社に招き入れることによって
企業成長のための変化を具体化するということが採用の最大の狙いです。
プロフェッショナル人材の採用手法
プロフェッショナル人材の採用手法については様々なものがあります。
- 前回お話しをした「プロフェッショナル人材戦略拠点」を活用する
- 民間の人材紹介斡旋サービスを利用する
- 公的あるいは民間の人材募集サービス(ハローワークやリクナビNEXT等)の活用
- 人のつながりやSNSを活用したリファラル型採用の活用
などが存在し、それぞれに長所短所があります。
また、企業の社風や求める人材要件から適した手法が異なりますので、
ここでは各手法についての詳細は割愛いたしますが、
大切なことは「仕事のやりがい」を軸としたマッチングコミュニケーションによる
採用設計ができるかということだと考えています。
「仕事のやりがい」によるマッチングとは
私が在籍していたリクルート社では「will」「can」「must」という言葉をよく使いました。
やりたいこと=will、やれること=can、やらねばいけないこと=mustという意味です。
日々の業務はmustであることがほとんどです。
しかし、常にcanとwillを意識し、自己成長と挑戦を求めていくという社風が
リクルートにはありました。
多くの新規事業がこうした姿勢から生まれ、今の同社の収益を支えています。
前置きが長くなりましたが、会社のwillと個人のwillが一致し、
かつそのために必要なcanが自分の中にあると感じたとき、
その人は「自分がやりたい仕事はこれだ!」と考え、
時に待遇や地域の壁を乗り越えて挑戦を求め転職するということがあるのです。
プロフェッショナル人材活用の成功例
ここで「プロフェッショナル人材の採用が大きく企業成長に貢献した例」を
ひとつ簡潔にご紹介いたします。
- A社 日常消費財(衛生用品)メーカー 本社大阪市 従業員180名
国内マーケットの伸び悩みをうけ、中国に進出したいと考えていたが
社内に「中国での新規ビジネスの開拓」経験を持つ人材がいなかった。
そこで中堅商社で長くアジアマーケットでの販路開拓を担ってきた人材を採用。
新規ビジネスの全権を与えたところ、持前の行動力で販路を拡大、
現地法人設立から現地代理店募集・契約までスピーディーに遂行。
企業の成長に大きく貢献した。
このA社の場合は
「中国の十数億人の健康を支える」ということにビジネスチャンスを見出し、
これから先の成長のwillを設定したといえるでしょう。
そこに、個人のcanがマッチした、ということです。
言い方を変えると、willを設定できたからこそcanができたということになります。
円滑な事業承継に欠かせない人材戦略とは、
将来の会社のwill、理念、事業ビジョンの設計から始まるものなのです。
そして
次期社長がこの設計に深く携わることが「社長の右腕」探しの第一歩だといえるでしょう。
次回は激化する新卒採用の現状と、
次世代の企業の礎づくりとしての新卒採用についてお話をさせていただきます。
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