事業承継を円滑に進める人材戦略
Thermalworks株式会社
富平晃行
第4回 将来の幹部候補を採用する新卒採用戦略
事業承継を控えている、もしくは承継の最中にある企業の経営者は
なぜ新卒採用をするのか、を今一度考えてみる。
新社長はその問いに対する明確な答えを持っているか。
会社が新しく人材を採用する行動としては新卒採用と中途採用があります。
今回は新卒採用についてまとめます。
次期社長を中心とした採用チームを発足させる
新卒採用に限ったことではありませんが、
事業承継を間近に控えてらっしゃる企業においては
採用に関するミッションの責任者を次期社長に持たせることが大切です。
そして「学生にとっての自社の魅力を再認識する」ことがスタートになります。
新卒採用では、給与や休暇などの待遇面だけではなく、やりがいや成長も意識し、
学生にとって貴社がいかに魅力的な場であるか、ということを伝える必要があります。
学生を知るということ以上に、自社の魅力を知ることが求められるのです。
なぜ新卒採用をするのか、を振り返ってみる
事業承継を控えている、もしくは承継の最中にある企業の経営者の皆様には
多額の採用費・長期育成期間を必要とする新卒を、なぜ採用をするのか、を
今一度考えていただきたいと思います。
あるシンクタンクの調査では、
近い将来「現存する仕事の49%がAIやロボットに奪われる」としています。
そのような時代がまもなくやってくるという中、なぜ人を採用するのか。
それも社会人としては素人である学生を採用するのか、多額の投資をするのか。
この問いに新社長が明確な答えを持っているのであれば、
それは事業戦略ができているということが言えます。
逆に、なんとなく、これまで通り5名採用する、だいたいこのレベルの学生を…
といった人材戦略では、採用される学生にとっても、採用する側の企業にとっても
双方に不幸な結末になりかねません。
新卒採用をするにあたって、まずやるべきことは「5年後の組織図を描く」ことです。
これから採用する人が大卒なら、5年後には27歳になっています。
27歳の彼(彼女)はどんな仕事をしているでしょうか。
どんな働き方でお客様に喜ばれる存在でしょうか。
まずはこうした情報を整理することをお勧めします。
リファラル型採用の検討
新卒を採用する方法として代表的なものはマス型採用手法ではないでしょうか。
マス型とは、「マス・コミュニケーション」のことを指します。
いわゆる就活サイトの活用です。
一般的に「学生にとって知名度のある企業」が有利になりやすく、
中堅・中小企業にとっては費用対効果の見えにくいものになりかねません。
そんな企業には「リファラル型採用」の検討をお勧めしたいと思います。
リファラル採用とは、日本では「縁故採用」と呼ばれてきたものに似ています。
欧米ではすでに主流となっている手法で、今日本でも見直されており、
現社員もしくは経営者が動き、積極的に学生にアプローチする手法です。
例えばこんな流れでの成功例があります。
- 若手社員が所属していた体育会系部活にアプローチし
「うちの社長が学生の話を聞きたいので良かったら焼肉をたべないか?」と接触。 - 集まった学生と焼肉を食べながら、学生の本音を社長がヒアリング
- 中でも「いいな」と思った学生を後日個別に食事に誘う
というものです。
本当にうまくいくのか?と思われるかもしれませんが、
採用活動ではない、あくまで「学生の話を聞きたい」という切り口のため
学生も「選考される」と思い敬遠する確率が低くなります。
最終的には、次期社長が学生を口説けるかが鍵になります。
また、もし失敗しても数万円の焼肉代で済みます。
優秀な学生一人との縁を作ることに成功すれば、
彼(彼女)を中心とした思わぬ縁につながることも期待できるのです。
多くの企業で実際に採用され始めていますので、
一度、導入をご検討されてみてはいかがでしょうか。
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